小唄「水差し」のご紹介。
「水差し」本調子
水差しの 二言三言言いつのり
茶杓にあらぬ癇癪のわけ白玉の投入れも
思わせぶりな春雨に 茶巾絞りの濡れ衣の
口舌もいつか炭手前 主をかこいの四畳半
嬉しい首尾じゃないかいな
男女の情痴を抹茶席の道具の名で綴り
合わせた、明治前期に作られた江戸小
唄である。
「水差し」は釜の湯を補う水を入れて
ある器であるが、ここは俗に言う「水
をさす」信じあっている二人に中傷す
る人があって、二言三言言い合いする
ことを指す。
「茶杓にあらぬ癇癪」は語呂合わせで
間尺に合わぬをもじったものと思うが
苦しい洒落である。
「わけ白玉の投げ入れ」は、訳は知ら
ぬがという意味と、白玉椿の投げ入れ
に挿した床をかけたもの。
茶巾さばきの濡れ衣」とは、濡れた茶
巾で茶碗を拭う作法を茶巾さばきと唄
い、その濡れた茶巾と濡れ衣とをかけ
た言葉。
「口舌もいつか炭手前」は濡れ衣の口
舌が済んだことと、炉に炭をつぐ作法
の炭手前とをかけ、「主のかこいの四畳
」の囲いは数寄屋(茶室)で、自分と主を
屛風内に囲うことを掛けたものである。
江戸小唄は歌沢から採ったもので、歌詞
はもって廻った言い廻しで、あまり結構
とはいえないが、作曲は一中節を採りい
れて、どこか茶の湯らしい寂の感じの漂
う曲となっており、女性の好む小唄とな
っている。
小唄鑑賞 木村菊太郎著より引用
茶道具の名を使って物語を紡いで
いるところが、私は中々面白いと
感じました。
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