小唄「空や久しく」のご紹介。
『空や久しく』 都以中 曲
薗八 一中
空や久しく曇らるる 降らるる雨も晴れやらぬ
清元
濡れて色増す青柳の 糸の縺れが気にかかる。
明治中期の小唄完成期に作られたものである。
この小唄は、五月雨の頃の風景を唄ったもので、歌詞は褒めたものでは
なく、むしろ悪文といった方がよいが、以中が得意の薗八節、一中節、
清元節の三つの浄瑠璃をうまく採り入れて作曲したので、聞いていて非
常に面白く、今日盛んに唄われている。(「邦楽つづれ錦」)
明治期のさらゝと唄う小唄万能の中に、これだけ大胆に諸曲を盛り入
れたのはほんとうに珍しく、しかも開封の時に、以中が得意の咽喉でこ
の小唄を自分で唄って披露した時は、さぞ一座がどよめいたことであろ
う。その意味で吟舟の『逢うて別れて』と好一対の小唄である。
この小唄は、芸者の一人が、青柳に煙る五月雨を眺めながら、ふとし
た縁で結ばれた自分を青柳の糸にたとえて、先から先へと物案じする気
持ちを唄ったものであるが、「曇らるる」とか「降らるる」とか、古語
か敬語か受身かわからぬ語法を使用しているのがこの歌詞の欠点である。
「小唄鑑賞」木村菊太郎著より引用
木村菊太郎氏によると、歌詞は悪文?とかなり手厳しいですが、私は
耳障りが悪いというわけでもなく、むしろ雰囲気のある小唄の歌詞じゃ
ないかしらと思います。
書かれたのが明治中期というのもあるのでしょうが、現代の音楽シーン
では語法などより、むしろフィーリングの方が優先されますので、今こ
の小唄を聞いても違和感は無いですね。
濡れて色増す青柳の 糸の縺れが気にかかる。この詞が特に意味深で
艶っぽくていいですね!
雨の日に口ずさみたくなる素敵な小唄です。