小唄「年の瀬や」のご紹介。
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小唄「年の瀬や」のご紹介。

2019年12月31日(火)12:56 PM

 江戸小唄 

    『年の瀬や』  四世歌沢寅右衛門曲

 

 年の瀬や年の瀬や 水の流れと人の身は

  留めて止まらぬ色の道 浮世の塵の捨てどころ

 頭巾羽織も打ち込んで 肌さえ寒き竹売りの

  明日待たるる宝船。

 

歌沢節 

 年の瀬や年の瀬や 水の流れと人の身は

  留めて止まらぬ武士が 浮世の義理の捨てどころ

   頭巾羽織を脱ぎ捨てて 肌さえ寒く竹売りの

    明日待たるるその宝船。

 

 「新台いろは書初」時代物。一幕。安政三年五月江戸森田座初演。

三世瀬川如皐作。

 「仮名手本忠臣蔵」の書替。

 明治後期に作られた歌沢系(寅派)の芝居小唄で、明治三十三年の

「高名忠臣蔵」上演の時、寅右衛門(当時美知)によって作曲された

ものであろう。

 赤穂義士討入の当日(元禄十五年極月十四日)、両国橋で宝井其角

が、同じ俳諧の道で知り合った大高源吾の零落した笹売り姿を、両

国橋の上で見かけ、「年の瀬や水の流れと人の身は」と発句で問い

かけると、源吾はすかさず「明日待たるるその宝船」と、つけて別

れる。

 その夜、松浦鎮信邸の俳席で、其角からその話を聞いた松浦候は、

その句から源吾の真意を悟って、丁と膝を打つ。

折柄隣家の吉良邸より聞こえる陣太鼓の音は、これぞ赤穂浪士の討

入りであった―というのがこの芝居の筋である。

 歌沢の「留めて止まらぬ~捨てどころ」までは、源吾が故郷の母

に遺言の手紙を書き送り、この世のすべての義理を捨てて主君のた

めに殉ぜんとする武士の意地を唄ったもの。

「頭巾羽織を脱ぎ捨てて」は、源吾が、日頃句会で其角に逢う時の

、投げ頭巾姿の礼儀正しさに引換え、今宵は一重布子に股引草鞋と

いう身すぼらしい竹売姿で、寒風のすさむ両国橋を渡る姿を唄った

ものである。

 江戸小唄は、歌沢節から採ったもので、色々の唄い方があるので

、代表的なものを挙げた。

歌詞も作曲もよく出来ており、「肌さえ寒き」に一中節を取り入れ、

年の暮れのわびしさ、慌ただしさと、来るべき年への望みなどをよ

く表現し、年の暮に聞くこの小唄の味は、正に年の瀬の感を深くす

る。木村菊太郎著「小唄鑑賞」より引用

 如何でしょうか。歌沢節から江戸小唄へと唄われて、あの有名な

「赤穂浪士討入」の物語にこの様なエピソードがあることを学び、

また俳諧の道の深さを知ることができましたね。

 今年も芝恋のブログを読んで頂き、ありがとうございました。

来年も小唄だけにとらわれず、様々なことを書き綴りたいと思います。

宜しくお願い申し上げます!

 

 



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