小唄「待つ夜重ねて」のご紹介。
季節は秋も深まり早くも晩秋。10月最後のブログとなりますがやはり季節に相応しい
小唄をご紹介したいと思います。
「待つ夜重ねて」
待つ夜重ねて月影も 何時しか細る恋の痩せ
男心のつれなさに 逢えぬ縺れを糸萩の
何時消ゆるとも白露の 乾くひまなき両の袖。
明治中期に作られた江戸小唄である。本調子の曲。
恋しい男がどうした事か半月近くも逢いに来ないので、欠け始めた月が一晩毎に痩せて
ゆくように、妓の身も心も一晩毎に痩せ細ってゆく思いを、「糸萩」に託して唄っている。
「糸萩」は「山萩」のことで、《秋の七草》の一つ。
女は「男心のつれなさ」を恨みつつ、秋雨の降る庭に、一本の糸萩が雨にうたれて大きく
枝が垂れ下がっているのを見ると、自分の今の身の上がちょうど雨に打たれた萩の様な
気がしてくる。あの萩の露が何時こぼれて消えて葉が乾くかわからぬように、妓の両袖も
涙に乾くひまがないであろう、と唄ったものである。
雨に打たれる萩を詠んだ名句に、
しら露もこぼさぬ萩のうねりかな。 芭蕉
白萩のしきりに露をこぼしけり。 子規
雨風や最も萩をいたましむ。 虚子
があるが、この小唄の作者も、雨に打たれる萩に、恋に痩せる妓の感慨を托した所は、
なかなか味なものである。(木村菊太郎著 小唄鑑賞より引用)
月、糸萩、秋雨・・・・女心のせつなさ、やるせなさを唄うに相応しい言葉ですね。
9月に中秋の名月を観に出掛けた向島百花園に、萩のトンネルがありました。とても風情が
あって綺麗でしたよ。花は終わりかけてましたが、行灯が並べられて雰囲気が素敵でした。
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