小唄「上手より」のご紹介。
「上手より」 桜川遊孝作詞・初代小唄幸兵衛作曲
上手より 囃子の船や影芝居
あやなす手先写し絵や
人気役者の声色も
流す隅田の夕涼み。
ちょっとロシア旅行をお休みして今回は小唄のご紹介です。
「上手より」は6月に三越劇場で開催された「春日研究会」で、
芝恋が栄芝師匠の糸で唄わせて頂きました。
とても好きな小唄の中の1曲です!
この小唄は幸兵衛の最も脂の乗ったときで、友人の吉原の幇間
桜川遊孝の名歌詞を得て、幕末から明治の始めにかけての夏の夜
、船を隅田川に浮かべて涼をとる船遊びを唄った秀曲である。
上手より・・・・とは、隅田川の上流の向島あたりを指し、涼
み船には芸者衆や幇間が乗り込んで、ここから漕ぎ下って辰巳(
深川)まで下るのである。
囃子の船や影芝居・・・・は、陰芝居とも云い、芝居絵を描い
た行燈を目じるしに掲げた船に十数人の者が乗り込み、客の求め
に応じて、船の中で鳴り物に合わせて役者の声色を使い、耳から
歌舞伎を楽しませたもの。
あやなす手先写し絵や・・・・は、今日で云う幻燈で、硝子に
描いた絵を燈火によって美濃紙製の映写幕にうつして見せる装置
で、巧みな手捌きと話術と三味線の伴奏で、これまた船の中で行
われた。
人気役者の声色も・・・・は、影芝居とは別に声色専門の「
声色船」も大川を上下した。
これらは隅田川の行楽が衰えると共に姿を消したが、当時はい
ずれも江戸市民の好劇趣味をそそったものである。
遊孝の作詞は、商売柄とはいえ、簡潔な言葉で当時の舟遊びを
活写して美しく、幸兵衛の作曲も、前弾きの佃から「上手より・
・・の出をカンにして、沸き立つ様な行楽の喜びを表現し、「
人気役者の声色も・・・・を聞かせ所として、「夕涼み・・を
しっとり唄い上げ、小唄派の代表作のみならず、今日まで昭和小
唄の代表作の一つに数えられている。 木村菊太郎著より引用
江戸時代にタイムスリップしてこんな粋な夕涼みを体験してみ
たいですね。