歌舞伎小唄「上野の鐘」のご紹介。
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歌舞伎小唄「上野の鐘」のご紹介。
2014年12月05日(金)10:52 AM
「上野の鐘」 市川三升作詞 草紙庵作曲
上野の鐘の音も凍る
春まだ寒き畦道に
積もるも恋の淡雪を
よすがにたどる入谷村
門の扉(とぼそ)にたちばなの
忍ぶ姿の直次郎。
この小唄は「天衣粉上野初花」(くもにまごううえののはつはな)
という世話物歌舞伎を唄ったものです。
一月末の春とは名のみの冴えかえる寒さに降る雨も、暮れて
雪となり、上野の暮れ六つ(午後7時)の鐘も凍る入谷田んぼを、
数々の悪事に追われる身の片岡直次郎が、吉原で深く契った大
口屋の三千歳が入谷の寮に養生に来てると聞き、一目暇乞いを
してから高飛びしようと、一目をさけて入谷村へ来た。
この場面を唄っております。
入谷村=浅草から新吉原へ行く途中で、幕末の頃は田圃で、畔
道伝いに往来した。
たちばなの=橘屋は市村羽左衛門を指す。
よすがにたどる=たよりに辿る意。木村菊太郎著 (芝居小唄}より参照。
十二月に入り、本格的な冬の寒さがやってまいりました。そんな季
節に唄うと直次郎の姿を想像し易いですね。今、唄うに相応しい一曲
ではないでしょうか。