弥生、三月何を唄おうか?
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弥生、三月何を唄おうか?

2015年03月06日(金)11:08 AM

 寒い寒い二月が終わって三月になりましたが、なかなか春らしい暖かな

陽気になりませんね。早く、「山笑う」となって欲しいです。

 今回ご紹介の小唄はちょうど今の季節にあったものです。

 

      「無理な首尾」


 無理な首尾して出先から 用事をつけて逢う夜さは

 枕も邪魔と引き寄せて 顔に冷たき前髪の

 月じゃごぜせぬ マァ白々と明鳥。

 

 芸妓が呼ばれていった料亭から、見番へ、何か苦しい口実を作って、座

敷を休むと届けたのち、人力車を走らせて恋しい男のいる家に逢いに行く。

 「枕も邪魔と引き寄せて顔に冷たき前髪の」は、男は女の来るのが遅いの

で、すでに床の中でうたた寝をしているのを、女は外出着のまま、男の枕も

とに座って、いきなり男の髪に頬を寄せる。「頬に冷たき前髪の」は、女が目

をつむってしばらく男の髪の感触を頬にうけているさまを唄っているので、前

髪は明治中期のざんぎり頭を指したものであろう。「枕も邪魔と引きよせて」

あたりは、思い切った官能的な表現で、明治時代の小唄趣味の頂点を示した

ものである。(小唄賛註)

 季は三月の始めで、春というのに淡雪でも降ろうという時候で、この時候で

ないと「頬に冷たき前髪の」という言葉が生きてこないと思う。(小唄鑑賞より

用)

 というわけでちょうど今頃この小唄を唄うと、歌詞の描く情景を想い浮かべ易

く、この小唄の持つ雰囲気を掴み易いのではないでしょうか。

 それにしても艶っぽい小唄ですね。男女の酸いも甘いも知り尽くしたような

人の方に唄っていただきたいかな?

 



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