小唄「真の夜中に」のご紹介。
「真の夜中に」初代平岡吟舟作詞・作曲
真の夜中に 朧の月を眺むれば
てっぺんかけたか一声は
うどんのぶっかけ 蕎麦屋の風鈴 按摩の駆け足
夜番の拍子木 明けにゃまだまだ 一寝入り。
この小唄は吟舟翁が明治から大正初年にかけての吉原情緒を回顧して唄った
ものであろう。というのは、昭和五年頃の新吉原遊郭は、関東大震災によって
焼かれて何れも本建築ではなく、不景気不景気の嘆声がかまびすしかったから
である。
吉原名物は古来春の桜、秋の仁輪加を三景容と称したが、近年兎角すたれ勝ち
であったが、昭和四年から復活して賑やかな昔の吉原を再現することになった
という。
この廓は、当時も午前二時までは太鼓を入れて三味線は夜っぴて弾いて騒い
でも構わない別世界であった。
小唄はその騒ぎのすんだ妓楼で、泊まりの客がふと目を覚まして朧月の照る
廓の風景を眺めて唄ったものである。
この小唄を蓼胡宇女の唄、蓼胡穣の糸で聞いたが、チントンシャーンで始ま
る古典小唄調の作曲で、朧夜を一声鳴いて過ぎゆく時鳥の声を「てっぺんかけ
たか・・・とカンで聞かせ、「うどん~按摩の駆け足・・・を早口で唄い、
『火の用心』と言いながら打つ~「夜番の拍子木・・・を聞かせ所として廓の
風景を描写し、「明けにゃ~一寝入り・・・を軽く、情緒たっぷりに唄い上げ
ている。
震災後の新作小唄は、吉原を題材とすることが少なくなった。この小唄は震
災前の吉原を採りあげた珍しい小唄で、一見明治の小唄のようにみえて、昭和
小唄らしい歯切れの良さは、吟舟ならではの作である。
「昭和小唄 その一」木村菊太郎著より引用
う~んムード満点の小唄なんですねーこの小唄は。
芝居がかった唄い方で雰囲気を出して唄いたいですね。
芝恋の大好きな小唄の一つです!