小唄「吉野山」のご紹介。
「吉野山」 初代平岡吟舟曲
吉野山 峰の白雪ふみわけて
入りにし人の 影ぞゆかしき。
文治二年四月八日、頼朝の妻政子のたっての所望により、
鶴ケ岡八幡宮の舞殿で法楽の舞をかなでることになった静は
、水干、袴、黄金の細太刀、金揉みの立烏帽子に檜扇を持ち、
吉野山みねの白雪ふみわけていりにし人の跡ぞ恋しき。
しずやしずしずのおだ巻きくり返し昔を今になすよしもがな。
の二つの和歌を即興でものし、鼓、銅拍子、鳳管にのせて、歌
い舞った。
吉野山で別れた義経を慕い、時世の逆転を願う静のこの心情
は、いたく頼朝の機嫌を損じたが、政子のとりなしでやっと事
なきを得たが、この時すでに静は六月の腹帯を締めていたので
あった。
その年の閏七月二十九日、静が男子を産むと頼朝は安達新三
郎に命じて赤子を奪わせ、襁褓にくるんで之を由比ヶ浜に捨て
て殺した.
九月、すべての望みを失った静は、鎌倉を去って京に帰り、や
がて母にも相談せず髪を切り落とし、草庵を立てて仏道修行に
専心した。剃髪した時は十九歳、翌年の秋に念仏を唱えながら
安らかに往生した。美しくも悲しい短い生涯であった。
小唄は「あとぞ恋しき」を「かげぞゆかしき」と歌詞を変え
て小唄化したものである。,
この曲は「別れ曲(もの)」で、「吉野山~入りにし人」は夫
義経を指す。すべてを忍んで別離に生き抜こうとする静の心情
を想い浮かべつつ唄う曲で、三下がりの替手がまたよくこの心
情をうつしている。「小唄鑑賞」木村菊太郎著より引用
いまNHK大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」がこの話を放送中で
ご紹介するのにはタイムリーかしらと思いました。
静が頼朝を恐れることなく、義経を慕う心情を歌い舞ったこ
とは大変有名なお話ですね。
静の気持ちになって唄いたい曲ですね。