芝居小唄「曾根崎や」のご紹介。
「曾根崎や」
曾根崎や 七つの鐘を六つ聞いて
茜に染むる比翼紋
浮名をお初徳兵衛が 心中沙汰とうたわせて
一足づつに消えてゆく 暁近き霜の身の果て。
「曾根崎心中」世話物。一段(三場)近松門左衛門作。
元禄十六年五月大阪竹本座人形浄瑠璃初演。
心中世話物の最初の作として戯曲史に一大革命を与えた記念すべき作品
である。
久しく上演されなかったが、昭和二十八年八月新橋演舞場で、宇野信
夫の脚色演出、二世中村雁治郎の徳兵衛、二世中村扇雀のお初によって
上演、大好評を博し、以後成駒屋の家の芸となった。
この劇のクライマックスの一つは、天満屋の場でお初が縁の下に徳兵衛
を隠し、足で縁の下にいる徳兵衛と心中の取り決めをする所で、徳兵衛
が女の足に頬ずりして死を決した心を伝える所は、鴈治郎と扇雀という
父子なればこそ見せられる妙技であった。
もう一つは最後の道行から心中場で、お初徳兵衛が無実の罪に生きる
望みも絶え、曾根崎天神の森をさまよった揚句、徳兵衛がお初の喉をつ
き、返す力で吾が身を刺し折り重なって息絶える。
徳兵衛は二十五、お初は十九の共に厄年であった。
近松がここを「七つの鐘を六つ聞いて、残る一つが今生の鐘の響の聞き
おさめ・・・と綴った詩情は、荻生徂徠が「近松の妙技ここにあり」と
賞讃したところであった。
小唄はここを捉えて、小野金次郎が美しい詩章を綴り、作曲の中山小
十郎もここを悲劇というよりは寧ろ、美しいリズムにのせた道行の甘い
陶酔感の漂う節付けとした所が見事に成功し、蓼胡満喜の唄、静子の糸
によって小唄人の心を捉えた。 (「芝居小唄」木村菊太郎著より引用)
今この「曾根崎や」を実はお稽古中です。難しい曲です!
ドラマチックに糸を弾かないと駄目ですね・・・・。そして唄う人と糸
を弾く人の息を合わせることが重要ですね。
今夜からNHK BS3で「ちかえもん」の連ドラマが放送されます。
再放送ですが観てない方はお勧めです。「ちかえもん」とは勿論近松門左
衛門のこと、私はもう観てしまいましたが大変面白いドラマで、当時の人
形浄瑠璃の事も良くわかります。