歌舞伎小唄の素晴らしさ。
小唄と一口に言いますがその中には、御祝儀もの、騒ぎ唄、新派芝居小唄、
お祭り、歌舞伎小唄等いろいろな種類があります。今回は歌舞伎小唄の一つ
『落人の色香』のご紹介させて頂きます。
『落人の色香』
落人の 色香隠せど梅川が 凍える手先懐へ 暖められつ暖めつ
二十日余りに四十両 遣い果たして二分残る
忍ぶ故郷新口村。
『冥途の飛脚』世話物。正徳元年三月竹本座、人形浄瑠璃、近松門左衛門作。
五日初日で五月迄大入りを続けた名狂言で、同じ作者の名作『心中天網島』と
並び称される。
これを改作して丹波屋八衛門を敵役に改めた『傾城恋飛脚』人形浄瑠璃があり、
歌舞伎『恋飛脚大和往来』が現在上演される梅川、忠兵衛の脚本である。
『落人の色香』は新口村の場。ここは原作では時雨となっているが、『恋飛脚』
では雪となって、これが一般化されている。
小唄は竹本(義太夫)の道行の詩章を採って綴られており、「落人の~暖めつ」ま
では、雪の大和路を故郷さして忍んで行く男女が、対の晴れ着に手拭を冠って、互
いに労り合って花道を出る所を唄ったもの。
「二十日余り~二分残る」は、梅川のくどきで、『大阪を立ち退いても、わたしが
目に立てば、借り駕籠に日を送り、奈良の旅籠屋、三輪の茶屋、五日三日夜を明か
し、二十日余りに四十両、遣い果たして二分残る。』という所で、小唄としても
義太夫節がかかった聞かせ所である。木村菊太郎著「歌舞伎小唄」より引用。
如何でしょうか。追手のかかった忠兵衛、梅川がやっとのことで故郷へたどり着
くがすでに代官所の捕手が迫り、降りしきる雪の中でもはやこれまで・・・。とい
う切迫したシーン。ドラマチックですねぇ!
この様な魅力的な歌舞伎小唄をお稽古したら、歌舞伎の舞台も文楽も観たくなっ
てしまいますね。
小唄のお稽古を通じて日本の古典芸能への興味が広がっていければ何よりです。
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