小唄「八重一重」のご紹介。
三月も半ばになってまいりますと、「今年のお花見は何処へいこうかしら?」
などと早くも桜の開花時期が気になっている方もいらっしゃるのでは?
三月の事を別名「夢見月」ともいうそうですが、満開の桜の木の下におりますと確かに夢見心地
になりますね。そんな三月に唄ってみたい小唄は「八重一重」です。
「八重一重」
八重一重 山も朧に薄化粧 娘盛りはよい櫻花
嵐に散らで主さんに 逢うてなまなか後悔やむ
恥ずかしいではないかいな。
この曲は三下がりで、本調子の替手が付きます。
娘盛りを桜花にたとえた、文政初年の上方小唄で、「主さん」という語のある所から見て、江戸
で作られ、のち上方に伝わったものであろう。幕末江戸端唄、歌沢に唄われた。
「八重一重」とは、桜の八重咲と一重咲の両方のことを指したもので、ここでは単に桜を指し
ている。
「山も朧に薄化粧」は、桜の花がおぼろにかすむ山の風情と娘盛りとをかけた言葉。
「嵐に散らで」以下は、桜が一夜の嵐に逢って散ることと、初心娘が好いた男に逢うて散るこ
とをかけ、「逢うてなまなか後悔やむ」は、あの時なまじっか(なまなか)主さんに逢わねば、こ
んな恋の苦労も知らなかったものをと、いう気持ちを唄ったもので、ほんのりと色気のにじむ、
情感あふれたよい曲である。(江戸小唄 木村菊太郎著より引用)
如何でしょうか?春らしい明るくてテンポの良い一曲です。唄ってる内容も分かり易くていい
ですね。今年のお花見でちょっと口ずさんでみたくなりますね~!!
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