小唄「世辞で丸めて」のご紹介。
「世辞で丸めて」
世辞で丸めて浮気でこねて
小町のようなわたしさえ
一夜の嵐に誘われて
散ればこの身は
ねえ もし一休さん。
作詞・作曲 初代永井ひろ
『一休禅師』舞踊劇。配役は
一休禅師 十三世守田勘彌
地獄太夫 二世市川松蔦
この芝居は地獄太夫が一休に人生を
問うて、その弟子になるという難しい
題材でしたが、永井ひろは芝居を観て
いるうちに、フッと子供心に聞いた『
一休地獄咄』を思い出した。
それは地獄太夫が一休に「毎日世辞と
浮気で過ごしている私達遊女という業
の深い者は、いかに小野小町の容色を
誇り、身に錦繡をまとっていても、一
夜の嵐にあって花の様にはかなく死ん
だ時は、来世は地獄とやらへ墜ちるの
でございましょうか。」と聞くくだり
があった。
この時ひろの頭には、この唄
の歌詞がスラスラと浮かんだに違いな
い、と筆者は想像する。
『世辞で丸めて浮気でこねて小町桜の
・・・』という、一見一休とは関係な
い清元『喜撰』の歌詞を冒頭にもって
きたのは、勘彌の飄々とした一休と松
蔦の艶麗な絡みあいを観ているうちに
、『喜撰』の喜撰法師と祇園の茶くみ
女お梶との絡みを思い出したからであ
ろう。
しかし清元をそのまま頂いては芸がな
いと、「世辞で丸めて浮気でこねて・・
・」と歌詞を変え、曲も清元ではチャ
チャチャチャチャ―ンと始まる所を、
チントンシャーンと変え「浮気でこね
てツンテン・・・」と変えたものであ
る。
この小唄は、難しい芝居をよく消化し
て、その舞台を想像させるような、早
間の面白い曲とした所は、ひろの作詞
・作曲の並々ならぬ力量を伺うことの
できる秀曲である。
「昭和小唄 その一」木村菊太郎著より引用
歌舞伎舞踊「喜撰」は亡くなられた坂
東流家元の舞台を幾度か観ているので
是非唄ってみたいと以前から思ってお
りました。
11月26日に三越劇場で開催される
春日会主催の「慈善会」で唄う予定で
す。興味のある方は是非ご来場下さい
ませ。

