小唄「人に知られて」のご紹介。
「人に知られて」二世清元菊寿太夫作曲
人に知られて(拾われて) もう百年目
《わたしゃお前に惚れ申す 嫌なら嫌と申すべく候》
度胸定めていやしゃんせ(せにゃならぬ)
お前もその気でいやしゃんせ
お互いにお察し。
明治中期の小唄完成期の江戸小唄の佳作の一つである。
この小唄は女が主人公となっているので、筆者はこれを日
本橋の芸妓で、男嫌いで名の通った人と解釈する。
何時しかお客の商家の番頭さんの一人を好いたらしいと
思い初め、一度どうぞ首尾をして逢ってほしいと、馴れぬ
手で書いたのが「妾やお前に惚れ申す」という文で、つて
を求めて男のもとへ届けさせようとしたのが、文使いの婆
さんが真っ青な顔をして戻って来て、大事な文を落としま
したという。これが、この小唄の始めで、「人に拾われも
う百年目」は、大事な恋文を途中で落として人に拾われた
からには、男嫌いももう朋輩衆に通じないと、芸妓が腹を
決めるところである。
これから崩けた調子で、「度胸定めておおぴっらにせに
ゃならぬ。お前もその気でいやしやしんせ。」と相手の男
に言う所で、「お互いにお察し。」は当時の流行言葉であ
ったと考えられる。
この小唄の文句を「人に知られて」「度胸定めていやし
ゃんせ。」と唄う人もあるが、冒頭の文句が正しいと思う。
小唄鑑賞 木村菊太郎著より引用
今では「人に知られて」、「度胸定めていやしゃんせ」
と唄っています。が、この小唄の内容からは筆者の考えが
あっているのでしょう。
しかし、唄うには現在の歌詞の方が唄い易いと思います。
小洒落た感じの小唄で変化もあって芝恋の好きなタイプ
の小唄です。
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