小唄「お梶」のご紹介。
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小唄「お梶」のご紹介。

2024年03月03日(日)12:23 PM

 「お梶」

和事なら天下無双の藤十郎さまの

しかけた恋はうらはらの罪な芝居
の筋書きと
知るによしない女気の
心のかじのとりちがいふっとふき
消す絹行燈の
消えてしじまの通り魔か
賀茂の河原の川底へ
ないて沈んだめんない千鳥。
作詞 土屋 健 作曲 黒崎茗斗・初代
本木寿以


『藤十郎の恋』新歌舞伎。大正八
年大阪浪花座。菊池寛作。大森痴
雪脚色。中村鴈治郎初演、三世梅
玉のお梶。
元禄十年二月末のある晩、都万太
夫の座付き茶屋宗清では、万太夫
座の弥生狂言の顔つなぎの宴が開
かれている。
弥生狂言には、近松門左衛門が苦
心して藤十郎のために書き下ろし
た密夫(姦通)の狂言『おさん茂兵
衛』で、隣芝居の半左衛門座の『
傾城浅間嶽』以上の好評を狙って
いるわけであるが、傾城事では名
人の藤十郎も、道ならぬ人妻との
恋は初めてで、何としても工夫が
つかない。
 宴席から抜け出した藤十郎は、
奥の離れ座敷で悩んでいると、宗
清の内儀お梶が入ってくる。
お梶は二十年前、宮川町の歌女と
して若女形以上に艶名をうたわれ
たひとで、その白い清楚な人妻姿
をみた藤十郎の心中には一瞬悪魔
のような知恵が浮かび、去ろうと
するお梶をよびとめて、切々たる
言葉でお梶に、偽りの恋の言葉を
ささやき、女が靡くと見てその場
を逃げ去る。
真っ青な顔をして、息を切らせな
がら酒席に戻った藤十郎は、「立
女形の霧消千寿に向かって「千寿
どの安堵めされい。狂言の工夫が
つき申した」という。
それから七日たった三月のある日
密夫狂言で大入り満員の万太夫座
の楽屋で、お梶はわれとわが命を
絶ったのである。

この唄は偽りの恋を仕掛けられて、
心の貞操を弄ばれたお梶の心境を
唄っている。
『和事なら』は、和事師藤十郎の
命を投げ出しての恋に、必死の覚
悟をきめ、傍らの絹行燈の灯をふ
っと吹き消し、身体をわなわなと
震わせながら男の近づくのを待つ
お梶のそばを、するりと通り抜け
て、暗闇を手探りで廊下に出よう
とする藤十郎にすがり、藤さま!
と低く呼ぶが、無残にも障子は閉
められる。
障子に取りすがって泣き崩れるお
梶を唄っている。
和事なら=上方狂言の「傾城
買」の遊冶郎を演じさせてはの意。
和事とは、江戸の豪放闊達な荒事
に対して、京阪で創始された優雅
柔和な歌舞伎の演出の一つで「傾
城事」はこの中に含まれている。
しじま=静寂。
「芝居小唄」木村菊太郎著より引用

 このお梶は栄芝師匠のCD「
樋口一葉」の中に入っていて聞き
ましたが、難しい曲ですね!
この物語を読んで弄ばれたお梶の
心中に思いを馳せて、ドラマをう
たい上げなくてはなりませんね。
 実はこの「お梶」を作詞されて
る土屋健氏の遠縁のKさんが昨秋
から私のお教室にお稽古にいらし
てます。
 この土屋健氏は「つたかずら」
等、他にも小唄を沢山作詞されて
いる方ですので、Kさんには頑張
って土屋健氏の小唄をお稽古して
頂きたいと思います。



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