世間を騒がす不倫騒動を百人一首より考察する?
侘びぬれば 今はた同じ 難波なる
身をつくしても 逢はむとぞ思う
《行き詰って苦しい思いをしているので、今はどうなって
も同じことです。
難波の海にあるみおつくしのように、この身をつくして
あなたに会いたい。》
この歌は恋多き男性として有名な陽成院の第一皇子、元
吉親王が詠んだものです。
元吉親王と藤原褒子が恋人であることが世間に知られた時
に、褒子にあてて詠んだ歌。
元吉親王はこの歌を詠んだ時、禁じられた恋をしていま
した。相手の女性はなんと!天皇の妻だったのです。
巷で話題の有名女優と一つ星レストランの有名シェフの
不倫騒動を否が応でも連想してしまいますね。
元吉親王は世間にこのことが知られて悩みますが、「そ
れでもあなたに会いたい」という情熱的な気持ちをこの歌
に込めました。
「みをつくし」とは、船に水深を知らせるために、目印
として海の中に立てるくいのことです。漢字では「澪標」。
みおつくしとは、船の道しるべなのです。大阪湾の一部で
ある難波の港には、澪標が多く立てられていたのです。
この歌で「みおつくし」は掛詞として使われています。
海にある「澪標」と、「命をかける」という意味の「身を
尽くし」の両方の意味を一つの言葉で表しています。
「自分はどうなってもいいから、あなたに会いたい!」と
いう男性の激しい恋情を詠んでいるんですね。
今も昔も不倫は辛く、しかし障害のある恋ほど燃え上が
るものなんですね。
不倫の是非はともかく、優れた文学作品やお芝居、ミュ
ージックは後先考えない激しい恋情から誕生しているもの
も多く・・・、自分の気持ちに正直な人ほど、哀しく、淋
しく、困った人になってしまうんですね・・・。
しかしながら、公開されてしまったラブレターがこの百
人一首の歌のような品位のあるものであったならばまだ良
かったのに、かなり残念なアートには程遠いもので驚きま
した。(現在進行中の不倫騒動では男女が逆転してますが)
人生に一度は、何もかも失ってもよいと思う程の身を焼
き尽くすような激しい恋をしてみたいか?
又は、平々凡々に程々のところで満足して、落ち着いた平
穏な人生を送りたいか?
さて、どちらかを選ぶとしたら???