小唄「緋鹿の子」のご紹介。
「緋鹿の子」田島断作・草紙庵曲
緋鹿の子の 手柄はくづれ富士額
三日月なりに紅さして 「誰だ」
名さえゆかりの弁天小僧菊之助。
「白波五人男」世話物。文久二年三月市村座、河竹黙阿弥作。
このうち浜松屋と稲瀬川の件をまとめたものは「弁天娘女夫白浪」の外題がある。
鎌倉雪の下浜松屋呉服店の場。
白浪五人男の一人弁天小僧は、文金高島田の武家の娘に化け、仲間の南郷力丸を
供侍に仕立てて浜松屋に乗り込み、わざと緋鹿の子の布を万引きした様にみせて
因縁をつけ、百両を騙ろうとするが、すでに武家と化けて乗り込んでいた五人男
の頭領日本駄衛門に見破られるが、却ってそこで「しらざあ言って聞かせやしょ
う。浜の真砂と五右衛門が・・・」と開き直り、膏薬代十両をねだってその場を
去る。
「緋鹿の子」は大正十五年に九月、草紙庵が歌舞伎小唄の処女作として発表した
もので、場所は鎌倉となっているがもちろん江戸である。
「緋鹿の子」から「富士額」までは、早瀬主水の息女に化けた女形の心持で唄
い、「三日月なりに」は、弁天小僧が額を番頭の算盤で打たれた疵で、ここから
鉄火に凄みをきかせ、「紅さして」は弁天が懐紙で額についた血糊をふき、そ
れをキッとなる仕草をあらわすため、紅は強くつめて唄う。
「誰だ」は番頭丁稚等の弁天を咎める言葉で、「弁天小僧」は節にはならず、台
詞でゆき、「トン」と二を打って(これは煙管で灰吹きを叩く音をきかせた)「菊
之助」は、長煙管を下に置き、その手で左の胡坐している足を搔き寄せ、左の肌
をぬいで見得を切るところで、派手に高く節止まりする。
これが草紙庵の作曲構想である。
緋鹿の子・・・緋色の鹿の子絞り。
手柄・・・・・手絡が本字。日本髪に飾る布。
名さえゆかりの・・弁天小僧は、もと弁天様で名高い江ノ島岩本院の稚児であ
ったので、江ノ島に縁のある弁天小僧と名乗った。木村菊太郎著「芝居小唄」より引用
さあ如何でしょうか?解説を読むとなかなか面白い歌舞伎小唄ですね。
出来れば歌舞伎を実際に観て唄ってみたいですね。
この小唄が、草紙庵の歌舞伎小唄の処女作とは、私も知りませんでした!
草紙庵はこの後次々に「吉三節分」や「蝶千鳥」等の素晴らしい歌舞伎小唄を作
曲したんですね。