小唄「雪はしんしん」のご紹介。
寒~い日が続いておりますね。
今日は霰が降ったとか・・・、今期の冬は寒さが厳しいようで炬燵を
出された方も多いのではないでしょうか。
そんな季節に唄って頂きたい小唄が「雪はしんしん」です。
「雪はしんしん」
雪はしんしん 夜も更け渡る
どうせ来まいと真中へ ひとりころりと肘枕
何刻じゃ ああ寝入られぬ。
安政年間の江戸端唄を明治になって三世清元斎兵衛が江戸小唄に
作曲したものであろうといわれている。
この小唄を聞いて、筆者の感ずることは、歌詞だけを読むと卑猥
と思われるこの小唄が、三味線に載って唄われるとき、如何に立派
な芸術品になっているか、ということある。
小唄の歌詞というものはかくあるべく、小唄の作曲とはかくある
べきものであることをひしひしと感ずる。
その意味でこの江戸小唄は貴重なものと筆者は常々考えている。
さてこの江戸端唄は、落語種にある吉原の廻しを唄ったものであ
ろう。
廻しとは、遊女が二人いじょうの客を取り、順々にその座敷へ行く
ことで、関西では一晩中買い切りで、浜松から東は廻しをとる習慣
があった。
江戸では、廻しをとられることにジンスケ(やきもち)をするのは
野暮で、廻しをとられながら惚れられてこそ遊びの骨頂がある、通
というのは之を知らぬ振りをすることであるといわれていた。
新内流しを聞きながら廊下の物音に聞き耳を立て、廊下をばたば
たと音がするので、はて来たかなと思っているのちに、隣の部屋へ
通り過ぎる。
「お待ち遠さま」と入って来るのへ、背中を向けてぐうぐう寝た
振りをする。
この唄は、今夜は雪だから客も少なかろうと、部屋へ入った男が
、花魁を待つ間、一人ころりと横になるが、お目当てがなかなか現
われない。どうせ直ぐには来まいと思いながらも、矢張りなかなか
眠れないという気持ちを唄ったもの。
江戸時代は「雪はしんしん夜もその通り」と唄った。
歌詞は卑猥であるが、節付けが誠によく出来ていて、少しも嫌な感
じを与えないばかりか、「雪はしんしん」「ひとりころり」などの
唄い口は工夫のいる、難しい曲である。
「江戸小唄」木村菊太郎著より引用
如何でしょうか。
何ともアダルトな風情のある小唄ですね。
雪の夜に炬燵で晩酌でもしながら、「雪はしんしん~」と口ずさんで
みるのもなかなか乙じゃないですか。
今時の歌にはないムード満点の唄ですね。芝恋の好きな小唄の一つ
でもあります。