「ベラルーシの林檎」は重かった!
女優、岸 恵子さんの書いた「ベラルーシの林檎」を読み終えました。
一番の感想は女優ではなく『作家及びジャーナリスト 岸 恵子』として、岸さん
を再認識したということです。
もう随分前に岸さんの「パリの空はあかね雲」を読みましたが、その際にもエス
プリの効いた、力強い文章に驚きを覚えました。そして今回読んだ「ベラルーシの
林檎」は、岸さんのジャーナリストとしての高い資質を感じさせられました。
この本の内容は終戦間際の恐ろしい空襲シーンに始まり、日本の敗戦で廃墟
となったところから六年で岸さんが女優になり、十二年後には日本を出奔、パリで
の生活の中で感じた東洋人、ユダヤ人に対するある種の「差別」から、「ユダヤ人
とは」と興味を募らせていく。そしてNHK衛星放送特集の取材でイスラエルや東欧
へ自ら出向き、危険な目にあいながらも取材を重ねていく「取材記」です。
この本が発行されたのが1993年11月、随分時が流れました。皮肉なことに
今の世界情勢は岸さんがこの本を書き終えようとしたときに「ガザ」と「エリコ」
の暫定自治!イスラエルとパレスチナ解放機構の相互承認!という信じ難い喜びの
ニュースが流されたにもかかわらず・・・・・、岸さんが懸念されてたように真の
平和には遠く及ばず・・・・。
世界情勢などには疎い私が読んでも分かり易く、興味深く読めるお薦めの本です。
そしてこの本を読んでイスラエルという遠い国、ユダヤ人という日本人にはあまり
身近ではない人々に対する認識や理解を少しでも持つことが出来たかなと思ってお
ります。
軽い気持ちで読み始めた「ベラルーシの林檎」は、想像以上に重かったです!