小唄「柳橋から」のご紹介。
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小唄「柳橋から」のご紹介。
2015年12月26日(土)9:43 AM
「柳橋から」
柳橋から 小舟で急がせ 山谷堀
土手の夜風がぞっと身にしむ 衣紋坂
君を思えば逢わぬ昔が ましぞかし
どうして今日は ござんした
そういう初音を 聞きに来た
江戸の通人は、柳橋の船宿から粋な女将の掛け声に送られて、船の艫をトーンと
突き出されて大川に出たといいます。
「山谷堀・・・」は、根岸川の下流にあたり、待乳山の北で、今戸橋から吉原へ進
む水路です。
「そういう初音・・・」は、鶯やホトトギスが一声鳴くときの様子を唄っています
が、ここでは遊女の声にも例えています。
唄の内容は、吉原遊びの二人の粋客が、隅田川から猪牙船で山谷堀を上がってき
たときには、すでに夕暮れ、今戸橋に着き吉原の土手(日本堤)を登って行きます。
そこでなんの前触れもなく突然訪ねて来た男に、馴染みの遊女は喜んで飛びつき
、「君を思えば逢わぬ昔が・・・」と男に言い寄りますが、「そういう初音を聞き
に来た・・・」と、男は「そんな話を聞きにきただけさ」なんて、茶化したりして
、答えてるところでしょうか。
江戸の男女の戯れを、短い詞の中でさらりと粋に唄ってる小唄です。
(色気も濃すぎちゃ野暮でげす 扇よし和著より参照)
江戸情緒たっぷりの小唄ですねぇ。短い曲ですが調子の良いテンポからしっとり
としたテンポへと変化していくところがとても好きです。
芝居の中でも、江戸末期の芸者屋の場というと必ず用いられる下座唄です。