小唄「柳 々」のご紹介。
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小唄「柳 々」のご紹介。

2020年04月08日(水)1:19 PM

 春の日に 萌れる(はれる)柳を取り持ちて

  見れば都の 大路し思ほゆ   大伴家持

 

 春の日に芽吹いた柳を手に取って眺めると、都の大路が懐かし

く思い出されます。

 家持が越中に赴任して四年目に詠んだ歌。

春に芽吹いたしだれ柳に、平城京の大路の街路樹を思いだし、賑

やかな都の様子を懐かしんだのでしょう。

 

 大伴家持の歌を読んで小唄で柳に因んだ唄は?と思い、「柳々」

が浮かびました。

 

   「柳 々」

 

 柳々で世を面白う 請けて暮らすが命の薬

  梅に従い桜になびき その日その日の風次第

 噓も誠も義理もなし 初めは粋に思えども

  日増(ひま)に惚れてつい愚痴になり

   昼寝の床の憂き思い どうした拍子の瓢箪で

    仇腹の立つ好きじゃえ。

 

 この小唄は文化文政時代の上方の名優三世中村歌右衛門の作詞と

云われる上方小唄の一つである。

 さてこの上方小唄「柳々」には裏話があって大阪島の内鰻谷の豪

商「人参三蔵円」の店主吉野五運の寵妓であった祇園の芸妓ゆかえ

と、同じく五運が贔屓にする歌右衛門とが、「どうした拍子」か恋

仲になってしまったのを、五運が粋をきかせて仲立ちとなってゆか

えと歌右衛門とを一緒にしてやった事を唄ったものと云われ、歌右

衛門の作詞で、ゆかえの曲といわれている。

歌の意味は、祇園のゆかえの女心を唄ったもので、「柳々~義理も

なし」までは、祇園の遊び女として、どなたのお座敷もつとめてい

たが、という意味で、「始めは粋に思えども」以下は、歌右衛門は

男前は良い方ではないので、始めは粋な人ていどに思っていたが、

逢う度毎に心をひかれ、昼寝の床の夢にまで見るようになってしま

った、どうした拍子で、こんなに惚れてしまったのやら、自分で自

分に腹が立つほどである、という所で、

この唄には「梅に従い」は歌右衛門の俳号梅玉。「桜になびく」は

吉野の桜で五運。「瓢箪」は五運の替紋が隠されている。

 上方系の芝居「梅川忠兵衛」「紙屋治兵衛」などの上方妓楼の舞台

の下座唄として常に用いられる。 「江戸小唄」木村菊太郎著より引用

 歌舞伎をよく観に行かれる方には聞き覚えがある事と思いますが、

この小唄の意味がわかると一層お芝居も楽しめますね。

 

 コロナウイルス感染拡大のために楽しみにしていた「團十郎襲名

披露公演」も延期となって大変残念ですが、ここは皆で我慢して一刻

も早く終息させることが大事ですね。

 

 

 

 

 

 



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