爽やかな五月に唄いたい小唄!
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爽やかな五月に唄いたい小唄!

2017年05月04日(木)7:10 PM

 爽やかな光満ちる季節に青々と彩る新緑、過ごし易い季節になりましたね。

今口ずさみたい小唄と言えば・・・・、『五月雨や空に一声』でしょうか。

 

       『五月雨や空に一声』  三世清元斎兵衛曲

 

 五月雨や 空に一声時鳥  晴れて漕ぎ出す木母寺の

  関屋離れて綾瀬口  牛田の森を横に見て

   越ゆる間もなく堀切の  咲くや五尺のあやめ草。

 

 明治二十一か、二年、斎兵衛が清元界に帰参して間もなく作った小唄で

ある。

 明治期の隅田川の左岸、向島から堀切にかけての風景をのべるのに、

   郭公(ほととぎす)鳴くや五尺のあやめ草。  芭蕉

 という俳句を借りて、『鳴くや』とあるのを『咲くや』と改め、これを

小唄の唄い出しと結びに分けたのが、この小唄の作詞の味噌である。

 陰暦五月に降る長雨と言うので「五月雨」と名付けられた梅雨が、やっ

と晴れ間をみせたので、向島の水神の料亭「植半」あたりから遊舟を出し

て、綾瀬、堀切と、隅田川を上る船の中で、空に一声時鳥の声を聞く、と

いうのがこの小唄の意味で、「木母寺」は、隅田村にあって梅若塚で知ら

れた天台宗延暦寺の末寺。

 「関屋」は古くから歌に詠まれた地名で、現在京成電車の小駅名がその

名を伝えている。

 「綾瀬口」は、隅田川の上流で、隅田村で本流の荒川に注いでいる川の

名で、綾瀬口はその分岐した川口を言ったもの。

 「牛田の森」は、綾瀬川に入ってゆくとすぐ左手に見える森で、「堀切

は葛飾区堀切町にあり、幕末から聞こえた菖蒲園で名高い。

 作詞者は不明であるが、五月雨に濡れ色鮮やかな見事な花菖蒲に時鳥

を配した所がこの唄の身上で、作曲も唄ものんびりとよくまとまった小唄

である。  木村菊太郎著「小唄鑑賞」より引用。

 如何でしょうか?明治期の初夏の風景が浮かんでくるような小唄ですね。

また、小唄の詞は俳句や和歌などを巧みに取り入れ、本当に奥深いもので

味わい深いものだということが良くわかりますね。

 

 

 



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