小唄「待つ夜重ねて」のご紹介。
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小唄「待つ夜重ねて」のご紹介。

2015年10月29日(木)11:28 PM

 季節は秋も深まり早くも晩秋。10月最後のブログとなりますがやはり季節に相応しい

小唄をご紹介したいと思います。

 

         「待つ夜重ねて」

 

   待つ夜重ねて月影も  何時しか細る恋の痩せ

    男心のつれなさに  逢えぬ縺れを糸萩の

     何時消ゆるとも白露の  乾くひまなき両の袖。

 

 明治中期に作られた江戸小唄である。本調子の曲。

恋しい男がどうした事か半月近くも逢いに来ないので、欠け始めた月が一晩毎に痩せて

ゆくように、妓の身も心も一晩毎に痩せ細ってゆく思いを、「糸萩」に託して唄っている。

 「糸萩」は「山萩」のことで、《秋の七草》の一つ。

女は「男心のつれなさ」を恨みつつ、秋雨の降る庭に、一本の糸萩が雨にうたれて大きく

枝が垂れ下がっているのを見ると、自分の今の身の上がちょうど雨に打たれた萩の様な

気がしてくる。あの萩の露が何時こぼれて消えて葉が乾くかわからぬように、妓の両袖も

涙に乾くひまがないであろう、と唄ったものである。

 雨に打たれる萩を詠んだ名句に、

   しら露もこぼさぬ萩のうねりかな。  芭蕉

   白萩のしきりに露をこぼしけり。   子規

   雨風や最も萩をいたましむ。     虚子

 があるが、この小唄の作者も、雨に打たれる萩に、恋に痩せる妓の感慨を托した所は、

なかなか味なものである。(木村菊太郎著 小唄鑑賞より引用)

 月、糸萩、秋雨・・・・女心のせつなさ、やるせなさを唄うに相応しい言葉ですね。

9月に中秋の名月を観に出掛けた向島百花園に、萩のトンネルがありました。とても風情が

あって綺麗でしたよ。花は終わりかけてましたが、行灯が並べられて雰囲気が素敵でした。

 



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